「呼吸」
コーチが口酸っぱく言う、この呼吸はなぜ大切なのか、意識してほしいのか。
自分の外側には様々な思考や意識があります。たとえば、他人との比較、この人はどこまで登れたのか、あれこれ考えてしまったり、お父さんお母さんの顔色を気にしたり。それらは考えても意識しても、一向に解決せず、常に悩みとして付きまといます。自分の外側の事を考えてもキリがないのです。当然体を動かすとき、それらがどこかしらの重りとなり、思うように動けません。
外側を気にしている自分がいれば、本来のパフォーマンスを発揮することは中々出来ないでしょう。自分の力を最大限に発揮するには内側への意識が必要です。
ではどのように内側へ意識をもっていくか、そこで手助けとなるのが「呼吸」です。指先や足先、筋肉や保持力などよりも、さらに内側の呼吸。普段無意識にしている呼吸は、感情が乱れれば、呼吸も早くなり、その逆もあります。呼吸が乱れていれば、体も硬直したり震えたりと、みんな体験していることでしょう。
おそらくその時、人が沢山いて緊張した、あの雰囲気は足が震える、といった外側の物事に理由付けしているのでは。それでは何も解決に至っていなく、同じ状況、さらに多くの人から見られる機会が訪れると同じことが繰り返されます。
どんな状況であっても大切なのは、内側への意識も持つこと、そこでの気づきに耳を傾けることです。
呼吸を意識的に行うと、意識も自然と内側へと向かいます。身体、気持ちが落ち着いている状態を呼吸を通じて感じる。その状態が自分の力を最大限に発揮できるきっかけとなります。
登っているときは、動きと呼吸を合わせる。どんどん辛くなると、呼吸が浅くなり、体もより疲労を感じます。意識が外側へ引きつられてしまいます。
そんな状況でも、常に意識は内側の呼吸。呼吸は、内側へと意識を導いてくれるだけではなく、身体や感情までもサポートしてくれます。
自分で登る時間でも意識的に呼吸してみてください。動きと呼吸がかみ合う瞬間は自分でも不思議なほどの力が生まれます。
カイラ 「ジュラ紀 11C/LCC 12A」
1本目 ラストゴール手前まで到達しており、非常に惜しいトライが続いていました。そのラストのムーブを向かえる前に呼吸を身体に入れ、動きに合わせ、持てる力を全て出そうと伝えました。下部からゴールまで、全てが繋がり、会心のクライミングでした。おめでとう!!!

2本目 初チャレンジ12A、グレードは気にせず、まず自分の力を出すことがテーマ。ルーフの中間部まで。
大きく動けるようになってきているので、さらにもっと大きく動けるように重心移動を意識していこう。
カホ 「ジュラ紀 11C」
1本目 初チャレンジのルート、最初のトライでどこまで自分の力を引き出せるか。クリップに苦戦し、ルーフに入る手前まで。この傾斜を登る機会が少ないのが不安になったのか、下半身でバランスが取れていませんでした。
2本目 少し進み、ルーフ中間部まで到達。初チャレンジから落ち着きが戻り、動きの固さもなくなりました。呼吸と動き、それを見守りながら登ろう。
ソウゴ 「ブラフマン 11B」
1本目 初チャレンジルート。自主練習で「ジェームズ11A」を登れ、勢いがありました。中間部を越え、上部まで到達。クリップに苦戦し、そこまで。下部から中間部までは落ち着きがあったのですが、クリップの不安定さで乱されてしまいました。
2本目 1本目の良い動きがガラリと変わり、動きがバラバラ。ソウゴの場合は、精神的なところが崩れやすく、そこから立て直すことが中々できません。気持ちが乱れても、それを見守り、より呼吸を身体に入れること。
サワ 「ぬらりひょん 12C」
1本目 初チャレンジルート、どこまでいけるか、コーチも期待と不安。動きの質が上がっているサワはなんと上部まで到達。後半のダイナミックなムーブも自分で解決策を見つけ、残すはゴールのみ。
2本目 1本目よりも思い切りよく動けていましたが、トップアウトできず。しかし本人も気づいているでしょうが、自分が思っている以上に動けています。上半身がリラックスしてきて、より力がダイレクトに伝わるようになっています。
ユウ 「ジュラ紀 11C」
1本目 一から立て直そう、そう伝えチャレンジがスタート。結果は核心を越えることができませんでしたが、コーチには進んだのがわかります。ほんの少し距離がでて、より近くなったこと。それと共に、内側から湧き上がる可能性。
2本目 先程のトライよりもまたほんの少し進みました。少しずつ少しずつでも、前に上にという気持ち。動き出すときになるべく身体をリラックスさせ、振りを大きく。その反動で持てる力をすべて出すこと。
ヒロタカ 「ジュラ紀 11C」
1本目 ヒロタカの課題である下半身でバランスをとる、このルートは足のホールドが小さく、より技術が問われます。足でバランスがとれていないので、動きがどうも安定しない。クリップも同じく。登りはルーフ手前まで。出来なくても出来ても、大切なのは自分の力をどこまで出せたか。
2本目 1本目と同様。なかなか思うように動けないもどかしさを感じますが、しっかりそれを受け止め、どう向き合うか。やるべきことは限られています。